オレンジプロダクションはここにあります

オレンジプロダクションのある三ノ輪橋駅前

オレンジプロダクションは"鉄道の町"東京都荒川区・三ノ輪橋駅前にあります

世界各地には、鉄道とともに発展してきたさまざまな"鉄道の町"がありますが、オレンジプロダクションのある三ノ輪橋(東京都荒川区南千住)もそのひとつです。オレンジプロダクションの玄関を出ると、最短20秒で都電荒川線<東京さくらトラム>の電車に乗ることができます。

旅立ちの町・南千住

オレンジプロダクションは、正面をJRの常磐線と都電荒川線<東京さくらトラム>、そして裏手を国道4号線に囲まれた場所にあります(地下には東京メトロ日比谷線、さらに駅はないですがつくばエクスプレス線も)。国道4号線では東京・日本橋の起点からおよそ6kmに位置しており、700km以上先の青森へと続いています。オレンジプロダクションから国道4号線を北へ歩いて15分、隅田川に架かる「千住大橋」が足立区との境です。隅田川かつて「荒川」と呼ばれておりその名の通り荒川区命名の由来となった川ですが、現在では治水対策で整備された荒川放水路に名前を譲り、「荒川の流れていない荒川区」になっています。

千住大橋

弥生も末の七日、あけぼのの空朧々として、月はありあけにて光おさまれるものから、富士の嶺かすかに見えて、上野・谷中の花の梢、またいつかはと心ぼそし。むつましきかぎりは宵よりつどひて、舟に乗りて送る。千じゆといふ所にて舟をあがれば、前途三千里の思い胸にふさがりて、幻のちまたに離別の泪をそそぐ。

 行く春や 鳥啼魚の 目は泪

これを矢立の初として、行く道なを進まず。人々は途中に立ちならびて、後ろかげの見ゆるまではと見送るなるべし。

おくのほそ道 松尾芭蕉

元禄2年(1689年)3月27日、深川の自宅を出発した松尾芭蕉は隅田川を船で進み、千住の地で船を降りて北へ向かい歩き始めました。このとき右岸(荒川区南千住)と左岸(足立区北千住)のどちらに降りたのか、はっきりとはわかっていません。現在では北千住、南千住それぞれに芭蕉の像や記念碑が設置されています。

芭蕉が歩いた日光道中・奥羽道中は現在では国道4号線へととって代わられましたが、この地に住んでいても、この道が700kmも先へ続いているとはなかなか考えも及びません。今では徒歩で旅をすることもほとんどしない時代になり、オレンジプロダクションにとっては三ノ輪駅や南千住駅、新幹線の東京駅や上野駅、あるいは羽田空港や成田空港が旅の玄関になりました。それでもときどき、ここから歩いて旅を始めた芭蕉を偲び、自分もまた「旅の前途を思い胸がふさがる」のです。芭蕉がそうだったように、旅の始まりは「楽しい」という気持ちよりも「心細い」という気持ちになることがほとんどです。

朝から晩まで一日中騒がしい鉄道の音

「鉄道好きだから気にならないんじゃない?」とよく言われるのですが、線路の横に住んでいるとそうもいかないぐらい気が散る音が響いてきます。常磐線は4時半から深夜0時半頃、都電荒川線は6時から23時頃まで、一日中騒々しい音を立てて走ってきます。加えて、南千住駅の裏手には隅田川という名前の貨物駅があり、速度は出さないものの夜通し物凄い重低音を上げて貨物列車が通ります(貨物列車も所定では1時~4時頃には走りませんが、長距離を走る分遅れがちなのでちょいちょい真夜中にも襲ってきます)。

隅田川駅

隅田川駅では東北・北海道方面への列車の発着が多く、国道4号線と同じく北へと向かう貨物が運ばれていきます。鉄道がまだ発展していなかった時代(道路<自動車>は鉄道よりもあとの輸送機関なので使われていません)、人も物も船が輸送の中心でした。明治29年(1896年)、日本鉄道株式会社は隅田川の水運へと繋がるこの地に「隅田川駅」を設置したのです。

旅客列車も、朝ラッシュともなれば3分もしないうちに次の列車が続々とやってきます。15両もありこの音もなかなか気が散ります。一昔前まで走っていた103系の頃には騒がしすぎて住めなかったかもしれません(103系は地元の大阪でさんざん乗ったものですが)。

そして、終点駅なのでせいぜい40km/hぐらいしか出さない都電荒川線ですが、これが意外にもなかなかの音を立てていくのです。

発条転轍機

これは何かというと発条転轍機(ばねてんてつき)というのですが、ここを列車が通るたび毎回凄い音を出すのです。転轍機は電動にせよ手動にせよ、車両の進む線路を切り替えるものですが、この発条転轍機は切り替えられず、片方向にしか進めません。ですが、進めるのは片方向でも向こうから来るときは逆方向からでも進めるようになっています。ばねの力でおさえられているトングレールを車輪が無理矢理押し広げて割り出す仕組みになっているのですが、割り出すとき・戻るときの音が離れた建物の中でも響くぐらいうるさいのです……。

そんなわけで、「鉄道の町」は「さわがしい町」です。仕事や旅立ちのときには良い町ですが、寝るのが好きな私はちょっと離れたところに住むのもいいかな……なんて思っています。